風呂敷電車

a:	こないだ電車に乗ったんさ
b:	あーれ、めずらしいんじゃねーの。なーんで乗れんけ電車。
a:	そんなん、あたりめーだんべよ。なんだ、俺が座ってたっくれ、となりに、じーさんが座ってきたんさ
b:	あぁ、よーく座ってかんね。
a:	んで、向かいの席には若けーの
b:	あら、
a:	女子高生が座ってんさ
b:	あー、いっぱいいっかんね
a:	すげーべ、今どきのは、まーずこんぐらいだんべ
b:	短けーな。
a:	だべ。見えっちゃーべ
b:	んーで、見えたんけーよ
a:	もーちっと、あとこんぐらいでなー、なんつって。ちがーんだよ。
b:	あーれ
a:	んで、その短けーのがピコピコピコピコ・・・・・・・あーれゲームなんぞやってんさ
b:	あー、あの「たらこっち」
a:	みてーのよー。あー、なーんかやってんなー、なんつって思って見てたんだきっとっか、やってっと熱くなってきちゃーべよ
b:	ほー、なんだー！
a:	そしたっくれ、股が広がってくっぺよ
b:	はーーー！？
a:	ちょーっと照れちゃって
b:	あー、照れちゃって
a:	ふーっと横見たっくれ
b:	横見たっくれ
a:	隣のじーさんが、なんか食い入るよーに、じーっと見てんだよ
b:	あーれ、やーっぱ、そっちの情熱は歳には関係ないかんねー
a:	だべなぁ
a:	んーで、俺もそーなんかなぁーなんつって、てっきり思ってたんだきっとっか、目線を追ってったっくれ
b:	なんだい、たらこっち見てたんけ
a:	いや
b:	違がーんけ
a:	だって、ピコピコ何やってんかなーなんつーのを、あんまり真剣には見ねーべ
b:	まーな。そーっとだわな。
a:	だべ。んーじゃ何見てんのかなぁーなんつって思ってたっくれ
b:	思ってたっくれ
a:	もー、それやめろっつーの
b:	やめたっくれ
a:	なっ
b:	あぁ、わかった
a:	こんだ、おもむろに、じーさんがカバンから何か取り出したっつーわけさ。
b:	あら、バクさんのカバンけ。
a:	まー、普通のカバンだきっとかよ
b:	あぁ。
a:	何かケースが出てきっちゃってっから、ありゃー、メガネまで出しちゃってるよー、なんつってびっくりしちゃったんだっきっとか
b:	あーれ、びっくりしちゃたんだっきっとか
a:	もー
b:	わりー、んーで、何だったの
a:	ハイテク
b:	履いてくんけ！？
a:	こんだ、じーさんがピコピコ始まっちったんだよ
b:	あーれ、おやじっち
a:	いや、ゲームじゃなくてよ
b:	なーに、万歩計け
a:	なーんか、こんくらいのよー電子辞書っつーのあっぺ
b:	あー、知ってる
a:	そーんで女子高生の持ってるカバンに書いてある文字を、調べ始めっちゃったんさ
b:	ありゃー、熱心な人だわね。
a:	俺も勉強熱心なじーさんだなぁーっつって最初は、そう、思ったんさ
b:	あー
a:	んーでも、かわいそうになっちってよ
b:	なーんで、かわいそうになっちゃーの
a:	だってよ、その女子高生のカバンの文字は英語じゃねーんだよ
b:	なーんで分かんの？
a:	そりゃ、見りゃ分かるよ。だって、たたずまいが違がーもん。だきっとっか、じーさん英語だと思って何度もその単語を入力しっちゃー、引いてんのよ
b:	ありゃ、まぁー
a:	女子高生はゲームに夢中でじーさんにカバン見られてるなんつーことは分かんねーままだったんだきっとっか、じーさん、目、やばかったもん。真剣だったもん。
b:	んーじゃ、英語じゃないから引けませんよーっつって言ってやりゃー、よかったんじゃねーんけ
a:	そんなん、言えっけ。おめーだったっくれ
b:	まぁー、言えるわけねーなぁ。
a:	それを思うとお年寄りに席ゆずりましょーなんつーのは１００倍楽なんだよ。それより、何ーんで、じーさんが電車の中でそんなもん使いたがんで？
b:	そりゃー、持ってりゃ使いたくもなっぺ。別に、人に迷惑かけるもんでもねーし
a:	んーでも、何やってんのかなぁー、なんつって、すげー気になっぺ。つい、のぞきたくなっちゃーべよ。そしたっくれ、そりゃー。
b:	そりゃーそーだっきっとっかよ、それ言ってたっくれ、電車ん中じゃー、本も読めなかんべよ
a:	あー、電車ん中って何なんだべとか。何でじーさん電子辞書なんて持って歩ってんだべなーとか、なーんで、人のことがこんなに気になっちゃーんだべなーとか、そーいや、電車ん中からデータが送れるなんつって宣伝してんなぁーとか思って、窓の外をながめてたっくれ
b:	ながめてたっくれ
a:	ながめてたっくれ！
b:	っつって、おめーがやってどーすんだよ。
a:	・・・・・・おもむろに、じーさんの携帯が鳴ったんだよ。
b:	はぁー、そんで女子高生の股ん中は見えたんけーよ
a:	あぁ、見えねーよーになってんだよ