娘同士

a:	うちの隣に引っ越してきた伊藤さん、こないだ、挨拶に来たんだよ
b:	へー、どんな人だい？
a:	何でも、埼玉から来たっつーから、ありゃきっとホンダに勤めてんだよ間違いねー
b:	あー多いもん、ホンダに勤めてこっち来る人は
a:	あー旦那と奥さんで挨拶に来たんだきっとっか、娘がいるっつーんだよ、あーれ　うちにも中３の娘がいるっつったら、なんだそれじゃ同級生だねーなんっつって、俺ちょっとたまげっちゃったんだ
b:	何だい、たまげちゃうことあんめい
a:	それが、その旦那っつうのがどう見ても、俺よりずっと若けーんだよ、あーれ　歳聞いたっくれ、33だっつうんだよ、そんときはその若さでびっくりしちゃったんだきっとっか、後で考えたっくれ、その娘は18ん時の子供だんべな、そんでまーたびっくりしちゃった訳よ。これ、すげーのが引っ越して来たなーと思って
b:	そんなに驚くこたーなかんべよ
a:	だーって、菓子折りの一つもよこさねーんだよ
b:	なんで不満けー？
Uh　隣り近所の声が　カラスとともに消える昨日忘れた涙　ほほを落ちてく前にここから走ってったトラックを眺めながらさよならだけが風に飛ばされてた影が長くなってきた　晩御飯の用意できた雨戸を閉める音がする　うちに入ろう
a:	娘と中学校同じだんべ、そんでその隣の娘が何だかスゲー美人だっつうんだよ。そんでも挨拶ん時、菓子折り持って来なかったんべ。それ以来こっちもいじやけっちゃってるから、たいした付き合いはねーんだよ、まー娘同志が仲良くするくらいでよ。でも美人だって言われっちったっくれ何だか気になっちゃうべよ
b:	何だい、随分態度変わっちゃうんじゃねーの？
a:	だって、旦那もそんなにいい男じゃねーし、奥さんだって普通の感じなんだよ。そんでその娘がスゲー美人だっつーんだもん、んじゃ気になっちゃーべよ
b:	んじゃ、一回見てみればいいべよ
a:	そーなんだよ、見たんだよ、あれ、娘同志が、一緒に学校に行ってっから、仕事行く時間ずらして、玄関先んとこでなにげに・・・・・・見たんさ
b:	どうだったい？
a:	それがほら、うちんとこの学校は、自転車通学者がヘルメットかぶんなくちゃ　なんねーべ、そんで影になってて、良くは、見えなかったんさ
b:	んーでも、どんな感じがくらいは、わかっぺよ
a:	そーねー、確かな手応えはあんね
b:	あんけ
a:	今なんつったって不景気だんべ、仕事なんて早く終わっちゃうべ。そんな早くうちなんて帰ったところでしょーがねーんだきっとっかよ。こないだも早くうちに帰ってきたら、玄関に上品な靴があんだよ。こらうちのやつの靴じゃねーと思ったら、かーちゃんが隣の娘さんが、遊びに来てるって・・・・・・あぁ唾飲んだよ、自然に自然に挨拶すっぺーと思って、「ゆっくりしてきたー」っつたんさ
b:	どうだったんだい？
a:	一瞬だよ、ちらっとだよ、そんなじっと見てた訳じゃねーよ
b:	んで、どうだったの？
a:	スゴイよ、うちの娘とは比べもんになんねーよ、メランコリックなんだよ
b:	はあー
a:	ここいらじゃ、あんなのはちょっといないよ
b:	ほー、はやく帰って来て見れて良かったんべな
a:	まー不景気も悪くねーっつうこったよ
b:	そんじゃ、菓子折り持ってこなかったことは忘れて、近所付き合い　しなくちゃぁなんねーべよ
a:	当たりめーだんべよ
b:	俺もすっぺ
Uh　隣り近所の声が　カラスとともに消える昨日忘れた涙　ほほを落ちてく前にここから走ってったトラックを眺めながらさよならだけが風に飛ばされてた影が長くなってきた　晩御飯の用意できた雨戸を閉める音がする　うちに入ろう
a:	ホンダじゃねーわ
b:	何が？
a:	隣の旦那ホンダじゃねーよ、引っ越してからまーだ、３ヶ月位しか経ってねーんだよ
b:	んーで、どうしちゃったの？
a:	引っ越しっちゃったんだよ、とーっとといなくなっちゃったんだよ。とーと旦那の仕事は聞かないっちゃったけど、まったく何考えてんだか分かんねーよ、んーでも、娘同志は仲良かったんべ。文通でもやったらどうだいっつったんさ
b:	そしたっけその手紙、読む気なんだんべ
a:	娘だけにこれがホントの娘（盗み）読みって・・・・・・苦しいか・・・・・・